ボクは手間賃仕事の職人なんですが、手間賃仕事というのは、作業をした分だけお金を貰えるという仕組みになっています。
BtoBのあるあるネタだと思うのですが、仕事を出す側は、あれやこれやと手を替え品を替え、職人の工賃を値切ろうとしてくることが多い(もちろん、そうでない取引先もあることは存じております)
「(納める)先が値を叩くから、工賃を安くしてくれ」とか、「たくさん出すから、単価を下げてくれ」とか、もっと酷いのになると「不景気だから安くしてくれ」とか。
確かに、例えばボクの属する着物業界なんかは、業界全体がかなり厳しい状態ですから、流通のどの段階でも値段について厳しいことを言われるのは当たり前のようにあります。
みんなそれぞれに抱えている事情はあると思います。
ですが、ハッキリ言ってそんなことは知ったこっちゃないんですよね。
職人の多くは、自分が成した仕事の分しかお金をもらえないんです。
なのに、相手の事情とやらにばかり配慮して、自分がもらう工賃を下げ続けたら、どうなりますか?
工賃を下げる=収入が減る ということですから、どんどん生活は苦しくなっていくし、最後には誇りを持っていた仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれてしまうことは間違いないと思います。
人生を賭けたに等しい仕事を、相手の事情だけに配慮したばかりに、投げ出さざるを得ない。
こんなバカらしい、そして理不尽なことを黙って受け入れても、誰も感謝も褒めてもくれません。
我々職人は、BtoBのビジネスにおいて立場がちょっと弱いだけで、奴隷になったわけではありません。
仕事の対価を自分で決める権利があります。
とはいえ、ただ単に「工賃を◯◯円ください」と言ったところで、拒否されるのがオチです。
では、どうしたら、ちゃんとした工賃を貰えるようになるのでしょうか?
重要なのは、適正価格の設定と相手に伝わる言葉
まず大事なのは、自分がいただく報酬の基準を明確に決めること。
業界や世間の相場というのは無視出来ませんが、それは後で擦り合わせれば良いことで、まずは自分がどれだけの仕事をしたらどれだけ相手に請求するかを自分で決めることが必要です。
要は自分で決めた「適正価格」ですね。
そしてそれは、相手との付き合い方によって変えるような物であってはなりません。
BtoBとBtoCの料金の違いはあって当然ですが、それ以外に、人によって料金を変えるようなことをしていると、大きく信頼を損ねることになります。
そしてもう一つ重要なのは「その適正価格に至る基準と要因」を、きちんと相手に分かりやすく伝える言葉を持つことです。
例え相手がプロでも、貴方の仕事に関してはプロではありません。知らないことや理解出来ていないことは山ほどあります。
だから、貴方が決めた適正価格を請求するには、その根拠を示す必要があります。
その辺りをきちんと自分の言葉で相手が理解出来るように伝える。これはビジネスにおいて非常に重要なことです。
職人さんって、あまりコミュニケーションが得意でない方が多いので、この辺りのことを避けている、もしくは面倒臭がっている人が多いように思います。
上手に喋る必要はないんです。ちゃんと自分の言葉で自分の考えを伝えることが出来ればそれでOK
それが出来て初めて、適正価格を請求することが出来るのです。
心のシミも抜く染み抜き屋|栗田裕史.com
最新記事 by 心のシミも抜く染み抜き屋|栗田裕史.com (全て見る)
- 社交性は、天賦の才ではなく努力の賜物 - 2016年3月11日
- 跡継ぎこそ、先代とは違うルートを行くべき理由 - 2016年3月3日
- 技術力とは、勝ち負けではない - 2016年1月31日